【レポート】鰻トーク&イート!

レポートが遅くなりましたが、ウナギの謎と味覚に迫る「鰻トーク&イート!」、熱気と食い気に満ちた参加者で会場がいっぱいになりました(7月31日開催)。まずは第1部のトークから。動物園ライター・森由民さんの登壇です。題して「ウナギなんて食うもんじゃない?!」

 

広い世界には「ウナギなんて食べるものじゃない」とタブー視する文化がありますが、日本にも、「ウナギは虚空蔵菩薩の使い」として食を禁じる地域もあります。
これらは、水害・旱魃の重なる新田地域に多く見られ、「人の力を超える水への畏怖」が、「ウナギ」を「神」や「神の使い」として見る文化を生み出し、やがて中世になって、虚空蔵信仰と結びついたのではないかという説です。

さらに、海外のミクロ​ネシアの説話を紹介。
ここでは、ウナギは人間にとって敵であったり悲恋の対象であったりするそうです。人間の女性とウナギが恋をし、最後、人間によって殺されたウナギの頭部がヤシの実となり、そこからヤシの木が生えてきたという話など、様々なバリエーションを持ってオセアニア全域に伝承されています。

ウナギのあるところ、神話あり。人間にとって身近な存在でありながら、どこかナゾめているところがこういう神話を生み出したのかな、とも思います。

続いて、博物月報主宰の盛田による「ウナギ旅の謎」

最近の研究で、ニホンウナギは日本から約2000km離れた西マリアナ海嶺を産卵場にしていることがわかりました(日本で近代的な調査が行われて以来、これがわかるまでに90年以上の歳月がかかりました)。

現在、蒲焼きにされるウナギの99.7%は養殖ですが、養殖ウナギといえども、河口付近で稚魚をすくって、それを育てているだけなので、すべてのウナギは「西マリアナ海嶺産」ということになります(養殖ウナギの一部に、空輸したヨーロッパウナギ、アメリカウナギを使ったものがありますが、これはサルガッソ海産になります)。

では、一体なんでそんな所から?——それに対して、最近、惑星科学の研究者から興味深い仮説が提示されました。
今から5200万年前のウナギの産卵地は、赤道付近にあり、近くの島にある川を成長の場にしていたと思われます。それがその後、フィリピン海プレートの拡大による大陸移動で海が広がり、河口が遠のく(産卵地がだんだん遠くなる)。ウナギは産卵地を変えず、結果、生涯で約4000kmの旅をする魚類となったという説です。
このほか、「氷河期には海面が下がり、産卵地と陸は近かった。氷期と間氷期を何度も繰り返しているうちに、ウナギは長旅をするようになった」という説もあります。

いずれにしても、ウナギの謎は、生物学だけではなく、地球科学も視野に入れないと、読み解けないようです。

参加者からも「(同じく河川の神様と称される)ナマズ信仰とウナギとの関係」や「日本海側のウナギが産卵地へ向かうルートについて」など、熱い質問が寄せられました。

 

さあ、そして第2部は会場を「和酒彩菜 遊月亭」に移して、遊月亭主人のタケルさんによる「鰻創作料理とおいしいお酒の夕べ」です。
本来、日曜は定休日なのですが、このイベントのためにわざわざお店を開けていただきました、感謝!

 

つきだしにウナギの骨から始まり、

うざく。わーい!

茶碗蒸し。わーい!

ウナギにオクラ、長芋、豆腐のネバネバ小鉢。わーい!
卵を持った成魚が見つからないことから、昔は「山芋がウナギに化ける」と
言われていたそうですが、そんな今日のトーク内容にもぴったりの料理です。

そして、今日のイベントのために大将が仕入れてくれたお酒は…

「石鎚 純米 土用酒」!!

“夏の土用の丑の日等にお使い頂くべく、うなぎの油分をスッキリと流すような酒質をめざしました”という、愛媛県西条市のお酒です。こんなウナギ料理専用のお酒があるですねぇ、日本の食文化のマメさはすごい。

そして、ウナギの尾頭付き。「この頭が椰子になるんですね」と、さっき聞いたばかりの知識が役に立つ(?)なんて素敵な料理。ちなみに天然鰻なので、このひと切れひと切れが1000円位するそうです(くらくら…)。
なんか、とてもモチモチして噛み応えがあります。コクというかなんというか、身の質感が伝わってきます。天然の川で揉まれ育ったからでしょうか。食べ物さんありがとう、しっかりいただきました。

〆は大きな土鍋いっぱいの巨大なひつまぶし。10人前ですから大迫力!

おこげのところがたまらなく美味しかったです。

そんなわけで、親しみ深いのにナゾが多いウナギに、トークとイートの2方面から迫ってみました。ご参加いただいたみなさん、そして遊月亭さん、ありがとうございました!

(文・盛田真史)

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